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最高裁判所第二小法廷 昭和41(オ)269 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人福岡福一の上告理由第一点について。

記録により窺われる当事者双方の主張の経過に照らせば、上告人および被上告人

間に昭和二〇年六月頃本件建物について売買契約が成立した旨の上告人の主張は、

所論使用貸借契約が仮装であると抗争する被上告人においてなすべきものであり、

したがつて、上告人の右主張はいわゆる先行的自白にあたるものというを妨げず、

その後これと一致する被上告人の主張がなされた以上、上告人としては、真実に反

し錯誤に基づくものでないかぎり、右主張を撤回しえないことは当然である。論旨

は、これと異なる見解に立つて、原判決を非難するものであつて、採用するに足り

ない。

同第二点について。

原審は、所論甲一号証(金員貸借抵当権設定証書)および二号証(約定書)の記

載内容を斟酌し、その他その挙示の証拠を綜合して、甲一号証が仮装の契約書であ

り、真実は上告人および被上告人間に昭和二〇年六月頃本件建物について売買契約

が締結されたものであること、ならびに上告人および被上告人が昭和二二年一一月

三〇日右売買契約を合意解除してあらためて本件建物につき使用貸借契約を締結し

たことを認定判断しているのであつて、右証拠関係に照らせば、右認定判断は是認

しうるところであり、その過程に所論の違法は認められない。したがつて、論旨は

採用しえない。

同第三点について。

臨時資金調整法四条ノ二、同法施行令六条ノ二に違反した行為は、同法一六条ノ

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二により政府においてその中止を命ずることができ、また同法一七条三号によつて

刑罰を科することができたことは、論旨指摘のとおりであるが、同法の立法趣旨に

照らせば、同法四条ノ二に違反する行為についてその私法上の効力まで失わしめる

ものであつたとは解されない。したがつて、これと同趣旨に出た原審の判断は正当

というべく、論旨はこれと異なる見解に立つて、原判決を非難するに帰し、採用す

るによしない。

同第四点について。

所論甲二号証(約定書)の第三条の文言を考慮し、原審挙示の証拠関係に照らせ

ば、上告人に対し原判示借受金三〇万円を弁済期限である昭和二五年一一月三〇日

以前に弁済する場合においても、本件建物の返還期日は同年一二月一日とすること

に確定されていた旨の原審の判断は、首肯するに足りる。論旨は、これと異なる独

自の見解に立つて、原判決を非難するに帰し、採用しえない。

同第五点について。

本件建物売買契約が臨時資金調整法に違反するものであつても、私法上の効力に

影響はなく、被上告人は右売買契約に基づき所有者として本件建物を使用収益して

いた旨の原審の判断が正当であることは、前記第三点に対する判断に説示したとこ

ろにより明らかである。また、所論鑑定人Dの鑑定の結果によれば、本件建物の屋

根の修繕が通常の必要費で賄いうるものではない旨の原審の判断は、是認しえ、こ

の点につき原判決の違法をいう論旨は、ひつきようするに、原審の専権に属する証

拠の取捨判断を非難するに帰する。したがつて、論旨は採用しえない。

同第六点について。

原判決によれば、原審は被上告人が本件建物等について所論修繕義務、善管義務

を負担するものではないと判断して、右義務不履行を理由とする上告人の損害賠償

請求を排斥していることが明らかである。論旨は、原判決を正解しない結果による

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ものであつて、原判決に所論の違法を認めえないから、所論は採用に値いしない。

同第七点について。

いわゆる第三者のためにする契約においては、第三者に権利を取得させるだけで

なく、それとともに反対給付を課することを妨げないのであり原判示事実関係のも

とにおいては、上告人および被上告人間において上告人が第三者たる被上告会社従

業員のため本件建物等について賃借権を設定する契約を締結した旨、ならびに右会

社従業員が本件建物居住を継続しかつ上告人においてもこれを熟知していたことに

より右会社従業員において上告人および被上告人間の前記契約につき黙示の受益の

意思表示をしたものである旨の原審の判断は、正当として是認するに足りる。そし

て、右事実関係のもとにおいては、上告人および被上告会社従業員との間に賃料額

がいまだ確定されていないからといつて、右両者間における賃貸借関係の存在を否

定すべき事由にはならない。したがつて、論旨は採用しえない。

同第八点について。

原判示第三者のためにする契約が有効であり、したがつてこれに基づく第三者た

る被上告会社従業員の本件建物居住もまた適法であることは、前記第七点に対する

判断に説示したところにより明らかである。論旨は、るる述べるけれども、いずれ

も独自の見解に立つて原審の正当になした判断を非難するに帰するものであつて、

採用するに足りない。

同第九点について。

原判示第三者のためにする契約が有効であること、被上告会社従業員の本件建物

居住が上告人に対する正当な権原に基づくものであることおよび本件建物の賃料支

払義務が右会社従業員において負担すべきものであることは、前記第七、八点に対

する判断に説示したところにより明らかである。そして、原審の確定した事実関係

に照らせば、上告人において本件建物を他に賃して賃料を収取しうる可能性は全く

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なかつた旨の原審の判断は、首肯しうるところであり、したがつて、本件建物の賃

料相当の損害を求める上告人の請求を棄却した原審の判断も、相当といわざるをえ

ない。論旨は、これと異なる独自の見解に立つて、原判決を非難するものであつて、

採用するによしない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

裁判官 色 川 幸 太 郎

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